アースデイ

どんな食材も
ムダなく、おいしく

フードロス削減に取り組む、産直アプリ「食べチョク」と生産者の想い。

毎年4月22日のアースデイは、私たちが暮らす地球環境を守るために、一人ひとりが行動し、環境の大切さを考えるきっかけとなってきました。

気候変動や生物多様性の損失など、環境問題は多岐にわたりますが、中でも「フードロス」は私たちの生活に密接に関わる課題の一つです。日本におけるフードロス量は、農林水産省の推計(2022年度)では約472万トン。わかりやすく10キログラムの米袋に換算すると、実に4億7,200万袋分にものぼります。その中でも、形や色が不ぞろいというだけで多くの農作物が処分されている憂慮すべき現状があり、産直アプリ「食べチョク」は、この課題に生産者とともに取り組んできました。今回、「食べチョク」と生産者へ取材を行い、両者のフードロス削減の取り組みや想いを伺いました。


おいしそう、の向こう側で

スーパーマーケットなどの青果売り場に並ぶ、色とりどりのおいしそうな野菜や果物。それらは色や形、サイズがおおよそ均一にそろっています。これは市場取引において厳密な規格が設けられているためで、基準に満たない農産物は「規格外品」として弾かれてしまうためです。大きすぎる(あるいは小さすぎる)ジャガイモ、湾曲したニンジン、表面に傷のついたトマト——。いずれも味や品質に問題がないにもかかわらず、売り場に並ぶことはありません。生産者にとっては、手間とコストをかけて育てた農産物が収益につながらないだけでなく、廃棄にかかる費用まで負担しなければならないこともあります。フードロスは、生産者の持続可能性に関わる問題でもあるのです。

そこで注目されているのが、生産者から直接食材を購入できる産直アプリです。その中の一つ、「食べチョク」は、規格外食材や、それら規格外食材を活用した加工品を紹介する特集を設けるなど、フードロス削減に取り組む生産者を積極的にサポートしています。

「食べチョク」では、特集などでフードロス削減に取り組む生産者を積極的にサポートしています。

2017年の立ち上げ以来、“生産者ファースト”を掲げる「食べチョク」は、消費者と直接コミュニケーションできること、市場には流通しない規格外品を自由に販売できること、セリや相場によって決まっていた販売価格を生産者自身が設定できることなど、生産者にとって魅力的な販路となっています。また、規格外・訳あり品は、どこが規格外・訳ありなのかが明記されており、生産者に質問することもできるので、消費者も納得して購入できる仕組みを構築しています。

Koike lab. 小池さん

「『食べチョク』は、農家から直接買うことを身近にしてくれました。自然の営みのリズムで無理なく出荷できる通信販売は、農家にとって大きな支えです」

そのように語るのは、「食べチョク」に出品するKoike lab.(岐阜県中津川市)の小池菜摘さんです。

小池菜摘さん: 「愛情を込めた野菜や加工品に対する共感の声を直接いただく機会が増え、フードロス削減や暮らしへの向き合い方を一緒に考えてくださるお客様とのつながりや絆さえ育んでいただいてきました」

かがやきいちご園の齋藤さん

「『食べチョク』のおかげで経営の形が大きく変わりました」と語るのは、かがやきいちご園(群馬県伊勢崎市)を営む齋藤大輝さんです。

齋藤大輝さん: 「それまではこだわりを詰め込んだイチゴが自店で売れ残ることが多く、こだわりや品質を汲まない市場で安価に取引されることもしばしばでした。現在では多くの方に当園の存在を知っていただき、さらに栽培にこだわりを詰め込むことができるようになりました」

ベジLIFE!!の香取さん

農業は天候に左右され、収穫量や時期は毎年変動します。「食べチョク」では余剰品が生まれたときだけ出品することも、定期便として継続的に届けることも、生産者の状況に応じて柔軟に対応できます。かねて農作物の定期便を販売しているベジLIFE!!(千葉県 我孫子市)の香取岳彦さんは、「食べチョク」での販売効果を以下のように語ります。

香取岳彦さん: 「定期便を300回以上購入していただいている方もいて、私たちの野菜が生活の一部となっていると感じますね。消費者の方から、おいしかった、子どもの野菜嫌いが減ったなど、うれしいお声をいただき、モチベーションの向上につながっています」

食べチョク運営の フードロス削減への想い

「食べチョク」は、農家育ちのCEO秋元里奈さんが、「生産者の“こだわり”が正当に評価される世界へ」をビジョンに掲げ、株式会社ビビッドガーデンを創業し立ち上げたサービスです。「実家が農家をしていたため(フードロスについて)目の当たりにしてきてはいましたが、ビビッドガーデンの創業時、生産者の畑を訪問した際に形が悪くて廃棄せざるをえない農作物が畑に無惨に捨てられてるのを見た時、課題意識を強く持つようになりました」と、秋元さんは振り返ります。

「生産者非常事態サポート室」を設置して、生産現場に降りかかる様々な危機にも迅速に対応しています。新型コロナウイルス感染症の蔓延や台風・地震・大雪などの自然災害発生時には、アプリ内に特集を組み、行き場を失い大量に余ってしまった食材を積極的に販売。イベントの中止で余剰となった牡蠣8,000個、また飲食店の出荷停止で行き場を失った玉ねぎ3トンを完売するなど、フードロスも未然に防いできました。

そのような取り組みを経て、秋元さんは「ユーザーやマーケットの価値観の変化を実感しています」と手応えを語ります。

秋元さん: 「コロナ禍を契機に『応援消費』という意識が広まり、『どうせ買うなら困っている生産者から買って貢献したい』というニーズが高まりました。また、食材の背景にある生産者の理念やストーリーに共感して購入する『ストーリー消費』も増えています。SDGsへの関心の高まりと相まって、形が悪くてもおいしいという本質的な価値が評価され、フードロス削減のために規格外品を買おうという意識も広がっています。さらに、生産者と直接やり取りする中で、普段捨ててしまう大根の葉っぱや魚のアラなどを活用する農家メシ・漁師メシを教わり、食材をムダなく食べ切る意識が芽生えるなど、消費者の行動変容にもつながっています」

フードロスの削減や生産者をサポートするために私たち消費者ができることを伺うと、秋元さんは以下のように答えます。

秋元さん: 「素晴らしい食材やお花を、強いこだわりを持って育てている生産者さんが日本全国にたくさんいらっしゃいます。スーパーマーケットやECサイトで食材を購入する際に、その先には『消費者に喜んでもらいたい』という想いで生産している方々がいることを、少しでも意識していただけたらうれしいです。

食材を購入する際に、その先には「消費者に喜んでもらいたい」という想いで生産している方々がいることを、少しでも意識していただけたらうれしいです
秋元里奈さん

秋元さん: 「生産者にとって、皆さんからの『おいしかった』『ありがとう』という直接の声は、何よりの励みであり、農業や漁業を続けていくための大きなモチベーションになります。ぜひ『食べチョク』を通じて、日本の一次産業の現状を知り、農家さんや漁師さんとの温かいつながりを楽しんでください」

生産者にも私たち消費者に期待することを伺うと、ベジLIFE!!の香取郁美さんは以下のように答えてくれました。

香取郁美さん: 「ぜひ“旬”を意識してもらえたらと思います。今はスーパーマーケットなどで年中いろんな野菜が手に入りますが、やっぱり旬の野菜はすごくおいしいんですよ。一方で、旬の野菜は多く採れるので、処理し切れない“でき過ぎ野菜”という問題もあります。規格外品はだいぶ皆さんに周知されてきたと思うんですけど、旬の野菜を意識していただけると私たちのように季節にあわせて作っている農家はありがたいですし、フードロス削減にもつながると思います」

日々の食材を購入する際に、産地や生産者のこだわりを知ったうえで選ぶ。規格外品や、旬の農作物を積極的に選んでみる。そうした日常の小さな選択の積み重ねが、生産者の持続可能な経営を支え、フードロス削減に貢献することになります。どんな食材も、ムダなく、おいしく食べるという選択が、巡り巡って、この豊かな地球を守ることにつながるはずです。