DEVELOPER SPOTLIGHT

不便を喜びに変える
アプリ開発

論文マッチングアプリ「PaperSwipe」開発者による
アプリ開発の醍醐味やヒント。

論文マッチングアプリ「PaperSwipe」は、学術論文の検索という少々“お堅い”作業に、スワイプするだけの軽快な操作性を融合させた、アイデアの光るアプリです。マッチングアプリにしばしば見られるような、左右にスワイプする操作で論文に「いいね(Like)」、または「スキップ(Skip)」することができ、目当ての論文に出会うことをサポートしてくれます。

「PaperSwipe」のスクリーン。スワイプ操作で簡単に学術論文を整理できます。

2002年生まれの個人デベロッパ・高橋直希さんは、「PaperSwipe」開発の動機を以下のように語ります。

「当時、大学4年生で研究室に配属された時期で、英語論文のアブストラクト(抄録・要旨)を読むだけでも負担に感じていました。ソーシャルネットワークでも、『新着論文をチェックするのが大変』という声を目にしたことで、『もっと手軽に、楽しく、リズミカルに論文を仕分けできるアプリがあれば良いのでは』と考え、カードスワイプ形式のUI(ユーザーインターフェース)を採用したアプリを考案しました」

「このスワイプUIは、直感的かつ楽しい操作感を持つスマートフォンならではの発明だと感じており、それを論文閲覧に応用したのが『PaperSwipe』です」

「PaperSwipe」は、AI(人工知能)による自動翻訳機能も備えており、論文のタイトルとアブストラクトを指定した言語で確認できるのも便利です。

「PaperSwipe」では、ユーザーの興味に合ったカテゴリーの最新論文が毎日届きます。

独学で切り開いたキャリア

高校に入って自身のコンピュータを手に入れた高橋さんは、早くも高校3年時にアプリ開発コンテスト「アプリ甲子園」で3位を受賞。2023年には世界中の学生を対象にした「Swift Student Challenge」に入賞を果たすなど、早くからエンジニア/アプリ開発者としての才覚を発揮してきました。

「『azooEditor』というApple Vision Pro向けの日本語入力アプリや、IPA未踏事業(※ITを活用してイノベーションを生み出す人材を発掘・育成する国家プロジェクト)にて『azooKey on macOS』の開発も行いました。これらの経験を通じて、学生時代から継続的にアプリの開発を続けています」

アプリ開発の習得について、「基本的には独学」だったと高橋さんは振り返ります。

「『Zenn』や『Qiita』などの技術記事を中心に、国内外のIT企業がGitHubで公開しているサンプルコードやチュートリアルを実際に動かしながら技術を学びました。特に、既存アプリの設計思想を読み解くことを意識しており、『なぜこのような設計を選んだのか』を考えることが、アプリ開発の理解を深める助けになったと思います」

高橋さんにとってはコードを書いて動かすだけでなく、UIや設計など、一つひとつの要素に「なぜ?」をぶつけて考えることが、アプリのクオリティを高めることにつながっています。

開発体制とモットー

アイデアの想起から開発、リリースまでのスピードを重視する高橋さんは、サーバーからアプリ開発まで一人で担当しています。

「企画、デザイン、実装、運用のすべてを一人で一貫して行うことで、スピード感を重視して開発できます。私の開発哲学は、『まず自分のために作る』ことです。最初のユーザーは、常に自分。自分の生活を便利にするために開発し、その便利さを他の人にもおすそ分けしたいという気持ちで公開しています」

アプリを作ることの楽しみ・喜びについての高橋さんの言葉は、アプリ開発、ひいては起業のヒントにもなることでしょう。

「特にうれしいのは、誰かの不便が減る瞬間です。日常の中で『ここ、ちょっと不便だな』と感じることは、私にとって宝探しのようなものです。不便を解消する仕組みを作り、他の人にも喜んでもらえた時が、開発者として最高の瞬間です。自分のための工夫が、思いがけず他の人の役にも立つ——。その偶然の重なりが何よりの喜びです」

「『PaperSwipe」』に関しては、今後も学生や研究者、あるいは論文をライトに読みたい方々にとっての“定番アプリ”を目指して改善を続けていきます。最終的には、論文を読むなら『PaperSwipe』と、自然に思ってもらえるような存在にしたいと考えています」