‣ 会社名: フヅクエ株式会社
‣ 創業者: 阿久津隆
‣ 会社のミッション: 本の読める場所・きっかけの創出を通じ、「幸せな読書の時間」の総量を増やす
‣ 従業員数: 16人

2025年3月にリリースされた、手軽に読書の記録ができる「Reads」。このアプリでは、読書の感想を投稿したり、“いいね”やコメントを送ったりと、本を愛する人たちによる温かなコミュニケーションが交わされています。
驚いたのは、この「Reads」の生みの親が、「fuzkue(フヅクエ)」という読書に没頭するためのカフェの店主であり、まったくのアプリ開発初心者だということ。東京・下北沢の店舗で、開発者の阿久津隆さんは朗らかに「Reads」の開発ストーリーを話してくれました。
開発動機は読書記録の 2つの“ペイン”
「Reads」開発の動機を、阿久津さんは読書記録における2つの“ペイン(苦痛)”を解消したかったからと語ります。
「ペインの一つは記録のつけ方、もう一つはアウトプットの仕方です。読書記録って、基本的に読み終わった本について書きますよね。それが、自分にはある時から息苦しくなっていて。読了ベースの記録だと、読み終わっていない、あるいは読まなくなった本をどうやって記録していいのかな、という疑問がありました。そこで、デイリーで記録していくスタイルなら、途中で読書を止めても“読んでいた日々”が残ると考えました」

「アウトプットに関しては、大学時代からブログなどで本や映画の感想を書いていましたが、だんだんと宿題のような感覚になってしまって。読書中から感想の構成を考えてしまったりして、読書の目的が変わってしまうことに気づきました。読んでいた時の、生き生きとした喜びみたいなものを反映させたい、もっと気軽に感じたことを記録したい、そんな思いがあって、いつでも記録できるアプリがあれば可能だと思ったんです」
孤軍奮闘のアプリ開発
「プログラミングの知識も経験もまったくゼロ」と言う阿久津さんは、AI(人工知能)をパートナーに「Reads」の開発に取りかかります。
「ここ数年、お店の業務を効率化するために、AIに相談しながらスプレッドシートでの作業の自動化を進めていました。それで、コードは読めないし当然書けないけれど、AIに相談すると何らか動くものはできるのではないかという手応えがありました」
そして、阿久津さんは「X」や「Instagram」といったソーシャルネットワークアプリや、映画記録アプリの「Filmarks(フィルマークス)」などを参考にしながら、AIと対話を重ねてコードを生成し、試行錯誤を繰り返して開発を進めました。

孤軍奮闘する阿久津さんを支えたもの、それは、これまでにない形の読書記録を作りたいという野心と、より多くの人に読書を楽しんでもらいたいという願望です。この感覚は、「こういうお店があったら自分はうれしいな」という思いのもと、2014年に読書に特化したカフェを立ち上げた時と似ていて、とてもワクワクしていたと阿久津さんは振り返ります。
いわゆる「DIY(Do It Yourself / 自分自身でやる)」精神旺盛な阿久津さんですが、同時に強調するのが、プロフェッショナルな人材の必要性です。建築に例えて、「AIとの開発はいわば日曜大工で、個々の機能構築はできても、全体を俯瞰して信頼できるものを作るには建築家のスキルが必須」で、「Reads」のローンチ前にはプロのエンジニアに協力を仰ぎ、パフォーマンスの信頼性やシステムの安全性を確認してもらったそうです。
走り出した「Reads」が向かう場所
2025年3月5日。試行錯誤を重ねて開発した「Reads」が、ついに世に放たれます。阿久津さんは「何の反応もないこと」と「バズること」その両方が怖かったと言います。実際、リリース後2日間で1万ダウンロードを達成し、寄せられる不具合や要望に戸惑いつつ、多くのユーザーから「こういうアプリを待っていた」といった好意的な声が届き、良いものを作れたと実感できたと相好を崩します。

今後の展望に関しては「Reads」を事業化すること、何より「もっと読書を楽しんでくれる人を増やしたい」と阿久津さんは力を込めます。
「『Reads』には、人間を数値化しないという考えがあって。“いいね”やフォロワー数を数値表示していないんです。数値によるユーザー数ではなく、一人ひとりが安心できて、以前より読書が楽しくなったと思えるような、個々の強い満足感を追求できる場所であってほしい。これは、『fuzkue』の店作りと共通する感覚です」
「本を愛する人を応援したい」という阿久津さんの思いが詰まった「Reads」は、これからも多くの読書家に寄り添いながら進化していくことでしょう。
