注目のデベロッパ

愛犬との絆が
途切れないように

テクノロジーで迷子犬ゼロを目指す、2人の女性デベロッパの願い。

‣ 会社名: 株式会社S’more
‣ 創業者: 澤嶋さつき、韓慶燕
‣ 会社のミッション: 人とペットとの共存社会を築く
‣ チーム人数: 8人

もし、かわいい愛犬が迷子になって戻ってこなかったとしたら……。愛犬家にとっては、想像もしたくない悲劇でしょう。「Nose ID(ノーズアイディ)」は、万一悲劇が起こってしまった際の救いとなるような画期的なアプリです。イヌの鼻には人間の指紋のように個々に異なる鼻紋(びもん)があり、このアプリは鼻紋を使って迷い犬を捜索できるのです。

開発したのは、澤嶋さつきさんと韓慶燕(かん けいえん)さんという2人の女性デベロッパです。かつての実体験が、2人の行動を促したと澤嶋さんは語ります。

澤嶋さん: 「以前、韓が愛犬とはぐれてしまうかもしれない出来事を経験しました。同じように悩んだり、実際にはぐれてしまって戻れない子たちがいることを知り、何か根本的に変えられないかと思考を巡らせていました。そんな時、『鼻紋認証システム』の存在を知りました。個々の情報を事前登録できる鼻紋認証アプリがあれば、万が一愛犬がはぐれても、飼い主をすぐに判明することができると確信しました。しかも、アプリなので費用がかからず、ワンちゃんの体にも負担にならない仕組みなので、多くの方に使っていただけるのではと考えました」

「Nose ID」では、迷子犬の発見者がイヌの鼻をアプリで撮影すると登録済みの犬と照会でき、鼻紋が一致すれば、発見者は飼い主と連絡が取れるようになります。また、迷子犬になったことを周辺エリアの「Nose ID」ユーザーに知らせることも可能です。

2020年からの準備期間を経て、「Nose ID」はベータ版として2022年にApp Storeに登場しました。最も困難だったのは、iPhoneのカメラでイヌの鼻をスキャンして照合する鼻紋認証システムの開発だったと澤嶋さんは振り返ります。

澤嶋さん: 「鼻紋認証システム開発のために鼻紋画像を何枚も集める必要があったのですが、初期に集めた数千枚の画像が鼻紋認証に耐えうるだけの条件になっておらず、学習に使える画像が数枚しかありませんでした。写真では難しかったため、動画に変更することで厳しい条件での撮影がクリアになりました。多くの人に協力いただき、一人ひとりに再撮影をご依頼し数千枚を集めなおしました」

リリース直後から愛犬家ユーザーからの反響は大きく、以下のような多くの感謝や喜びの声が届いているといいます。

こちらの鼻紋認証アプリの開発は迷子犬を減らすのみならず、将来的に飼い主と愛犬の暮らしを便利にしたり、おでかけをもっと楽ちんにしたりと色々な可能性があると思っております。
震災などどうしようもないこともありうる世の中で、言葉の話せない愛犬を探す手だてがあればお互いの心の支えにもなります。鼻紋システムを知ってうれしく思いました。応援しています。

現在のアプリ開発体制は、UI/UX(ユーザーインターフェイス/ユーザーエクスペリエンス)をメインで検討するPM(プロダクトマネジャー)が1人、リードエンジニアが1人、アーキテクチャーや全体像を俯瞰するアドバイザーのような役割が1人で、鼻紋認証システムの開発に3人がチームで関わっているといいます。開発において大切にしていることを伺うと、「ユーザー目線で開発すること」と澤嶋さんは答えます。

澤嶋さん: 「私たちチームは、飼い主様と直接お会いして何度もインタビューを実施しているため、UI/UXを検討する際に具体的な人物と使用シーンを思い浮かべながら議論することができます。リリース後も、想定通りの使い方になっているか、つまづいている操作はないかを実際に使用されているシーンを拝見させていただき、改善を繰り返しています」

続けて澤嶋さんは、「犬を飼うときに当たり前に登録するようなアプリに育てていきたい」と今後の抱負を語ります。

澤嶋さん: 「トリミングサロン、病院、ホテルなどで鼻スキャンを活用し、簡単にチェックインができたり、これまでの履歴が分かったりと、より便利に生活ができるようにできるといいなと思っています。また、例えばマナー度によりスコアがつき、スコアが高ければ愛犬と同伴でお出かけできる場所がどんどん増えるなど、人とペットが共存できる仕組みを構築したいです」

女性デベロッパとしても注目を集める澤嶋さんと韓さんは、2023年に「リコチャレ」(理工系分野に興味・関心を持つ女性を応援するための、内閣府男女共同参画局が中心となって行っている取り組み)の一環として用意されたApple Storeのセッション「Today at Apple」に登壇されました。未来の女性デベロッパたちに、澤嶋さんは以下のように呼びかけます。

澤嶋さん: 「難しく考える必要はないと思います。日頃不便に感じていることをきっかけに、アイデアを膨らませてチャレンジしてみましょう!」