インディーズ スポットライト

人類の進化への興味
から始まる開発

人類と文明の黎明期は、個人的にとても興味深いのに、まだまだ世間での注目度が低いように感じています。少しでもその面白さに気づいてほしい、という気持ちがあります
NORIYUKI TANAKAさん

App Storeでは、個人で、あるいは少人数で、ゲームやAppを開発する数々のインディーズデベロッパが活躍しています。会社員として働く傍ら、一人でゲームを開発しているNORIYUKI TANAKAさんもその一人です。「グレートジャーニー」を始めとする、人類と旅と歴史を題材にしたゲームを生み出すTANAKAさんに、ゲーム開発への想いを聞きました。

独学で始めたゲーム開発

TANAKAさんがゲームを作るようになったのは、数年前のことだといいます。子どもが小さい頃に、マウスをクリックすると絵柄が変化するような単純なプログラムを組んで見せたことを契機に、自分でもプログラミングをするようになったそうです。

ちょうどその頃、人類が猿から進化して文明を作り始める頃までの本を読むことにもはまっていて、「これをプログラムで表現できたら面白いな」と思うようになったことから、プログラムの書き方を調べて学び、ゲーム開発へと踏み出しました。

「ネットでプログラムの書き方を調べていると、ゲームの作り方のページが目に入るようになって、だんだんそちらへ引き寄せられていった感じです。ゲームエンジンと3Dグラフィックを同時に勉強しながら制作に取り組みました」

こうして生まれたのが、生き物や地形、天候を操作して、人類を誕生させ、文明が繁栄するまで導く「グレートジャーニー」でした。次にTANAKAさんは、テーマを幕末に設定した新たなゲーム「バクマツ!」の開発に着手します。

しかし、制作中に「今の自分の実力では思い描いているイメージを表現できない、ということを痛感しました」とTANAKAさん。

そこでゲーム制作のテクニックの幅を広げるため、操作性が異なるゲームを作ろうと「サピエンスカード」「HOMARO!」そして「オサリアン:OSARIAN」を手がけたといいます。

ユニットを自由に移動させる仕組み

「HOMARO!」は、六角形に区切られた土地から土地へユニットを移動させ、アイテムを獲得したり、道具を作ったり、地形を変化させたりしながら人類の進化を促してアフリカ南部から世界各地へと人類の生活圏を拡大していくシミュレーションゲームです。

パズルのように行動の順番を考え、変化する環境に合わせて道具を作り、人類が繁栄したら特定の人間の統率力を高めてリーダーを生んだりと、空の上から人類の進化に影響を与えていきます。

基本的に観察することを想定して作った「グレートジャーニー」では、ユニットの操作はおまけの機能として用意されていたとTANAKAさんは話します。そこで「HOMARO!」を企画する際には、バーチャルパッドで自由にキャラクターを動かせるゲームを作ることを目標にしました。

「当時のスキルでは、ユニットとカメラを別々に操作する仕様にしかできず、なかなか直感的な操作を実現できませんでした。そこでユニット同士をリレーのように切り替えていく仕様を考えて『HOMARO!』に実装したのです。これによりシンプルな操作が可能になりました」

自分ならではの切り口を考える

決められた世界の中、そこで暮らす人々のコミュニティを作り、ヒエラルキーの頂点を目指す「オサリアン:OSARIAN」。自分以外の他のユニットは「好戦的」「友好的」「職人肌」などのイデオロギーを持っており、それに準じて行動しています。コミュニケーションなどを通して他の住人をコミュニティに参加させ、エリアで唯一のコミュニティを作り、ヒエラルキーのトップに立つと勝利となります。

1回のゲームプレイが短く、何度もプレイするタイプのゲームを作ってみるため生まれたのが「オサリアン:OSARIAN」でした。

またTANAKAさんは、自身のゲームをアップデートしていく際に必要な、自分ならではの切り口を考えてみるのも「オサリアン:OSARIAN」の狙いだったといいます。「コミュニティとヒエラルキーの要素をうまくゲームに落とし込み、文明が発達した世界のパワーバランスをうまく表現できると、今後既存のタイトルをアップデートしていく際に活かせるのではないかと考えています」

その日できることを一つずつ

日中は働いていて、ゲーム制作に充てられる時間は1日に1~2時間しかないというTANAKAさん。普段は「サラリーマンとしての仕事が終わったあとに、自宅に帰ってから1人で作業しています。夕食後のダイニングテーブルにMacBookを置いて、家族がテレビを観ている横で作業をしています」と話します。

開発作業は、1~2時間の間に終わるものの中で、優先順位の高いものから順番に進めているそうです。「家に居る時でも、子どもの相手をしたりすると、何をどこまで終わらせたのか忘れてしまうのでそうしています。ToDoリストのようなものは作っていません。どんなにアイデアを出しても時間が足りないので、今は覚えているものだけを実装しています」

そんなTANAKAさんは、現在「バクマツ!」を、「理想のイメージに近づけるため再構築する作業」を進めているそうです。

「『サピエンス・カード』『HOMARO!』『オサリアン:OSARIAN』をリリースしたことで、様々なテクニックが身についてきました。これらの作品も、いずれ人類が現代まで進化できるようにしたいと考えています」(TANAKAさん)

これからも、人類と旅と歴史を題材としたゲームを作っていきたいとTANAKAさんは話します。

「ゲームを作り始めるまでは、空き時間に読書をしていました。様々な本を読んでいるうちに、人類がどういう方向へ進化していっているのかを、体系的に考えるようになりました。

グローバル化が進んでいくと、近い将来『人類の起源』というものの意味がもっと重くなるのではないかとも思っています。全人類が共通の祖先に感謝して祝うことができれば、とても素晴らしいことだと思います。また人類と文明の黎明期は、個人的にとても興味深いのに、まだまだ世間での注目度が低いようにも感じています。少しでもその面白さに気づいてほしい、という気持ちも、ゲーム作りのモチベーションになっているかもしれません」

読書や経験を通して学んだことを生かし、ユニークなものを作っていきたいと話すTANAKAさん。コツコツと、しかし着実に、作業を続けるTANAKAさんの作品をぜひ楽しんでください